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こカートリッジの登場こそキャンプ用コンロ史における黒船だったのです
リア・ディゾンもビックリの「寒冷地仕様」です
今年の夏に、常連さんが購入されたものを見せていただいたのですが、それがまさにあの懐かしのマナスル製灯油コンロでした。

当時と寸分変わらぬ仕様に涙を禁じえなかったのですが、イジらせてもらっているうちに我慢できなくなり、「これ火つけていいッスか??」と着火させてもらいました。

ああ・・このメタの燃える臭い・・この燃焼音・・これぞコンロよ!
と思わずランバラ風に呟いてしまいましたが、高校時代のネガな印象とは打って変わってアッサリと着火し、あの当時のあの備品のコンロの性能はメンテナンス不足に起因するものだということを思い知らされ、四半世紀ぶりに反省いたしました・・
さて、大学に入って個人で山登りをする際に僕は久しぶりに例の「キャンピングガスコンロ」を持ち出してみました。

12月末の大峰山脈です。

2000m程度の山とは言え一応「冬山」ですので、ガスコンロの性能には不安があったのですが、他にコンロを持っていないのでしかたがありません。

しかしそこで僕はキャンピングガス(当時のガスコンロ)の性能の限界をそこでアッサリと知ることとなりました。

稲村ヶ岳との鞍部で昼食のためにコンロにコッフェルをかけお湯を沸かした時のことです。
5分経過・・・まだぬるま湯になったかな?程度です。

待ちます。30分経過してもまだ沸騰する様子がありません。

さらに待ちます。45分経過してもまだ沸きません。

今思い返せば、このコンロの性能以前に45分もボンヤリと待ち続けた僕の判断能力に疑問を感じざるを得ませんが、結局僕はぬるま湯よりもちょっと暖かい程度の紅茶でフランスパンを流し込みながら、「やっぱガスはアカンなぁ」などと冬の大峰山を眺めなが呟いたりして山行を終えました。

さあコンロはどーしよう??

山から帰ってくると僕は思案しました。

ガスもダメで、灯油もコリゴリならば残るはガソリンかぁ・・・
でも扱いが面倒くさいんだよなぁ。

僕のように単独行動が多いパターンですと、炊事などはテント内で済ましたいこともあるんですけど、ガソリンはそういうことは厳禁です。(ホントはガスでもダメなんですけどネ)
友人の「PEAK1」がプレヒート不足で火だるまになっているのとかを見てしまうと益々ガソリンという選択には心が萎えてきます。

そんなある日のことです。

友人が「新しいコンロ買うたんや」と自慢げに見せてくれました。

「おおEPIかっ」

この目新しいブランドのコンロの広告が「山と渓谷」誌の裏表紙などを飾っているのは知っていました。
「ヒマラヤ遠征隊が使用!」みたいなキャッチコピーも読んではいました。

しかし僕にとってのガスは、先の経験から「2000m級の山で、45分経ってもお湯を沸かせない使えないシロモノ」という先入観というか白眼視があって、その広告もあまり真に受けていませんでした。

「でも・・ガスなんだよねぇ・・・」とテンションの低い僕に向かって友人は
「まぁ見てみ」とそのコンロに着火しました。

途端に「ゴオォォォォォーーーーッッッ!!!」という唸りとともに青白い炎を上げるそのコンロに僕は釘付けになりました。

「ええ??何このパワー???」

いくら室内とは言え、この炎の勢いに比べればキャンガスのそれはまるで線香花火です。蝋燭です。

友人はニヤリと笑うと「寒冷地カートやで」と、グリーンのベースに黄色い文字で「EPI」と書いてあるカートを見せてくれました。
そこにはちょっと自慢げな雰囲気で「寒冷地用」と書かれているではありませんか。

ガス成分の配合を、低温にも強いものにしたその新しいカートリッジの登場は、まさに登山用コンロ史における革命的な出来事だったと言っても過言ではありません。
それは2サイクルエンジンにおける排気デバイスの開発と同等か、それ以上のインパクトを持っていました。
少なくともその当時の僕にとっては・・・

僕は早速登山用品店に足を運びました。
コンロ売り場に走りました。

目指すはEPIです。イワタニプリムスは若干後追いだった記憶があるのですが、何よりもあのグリーンのカートリッジのオシャレ感が僕を惹きつけました。

イギリス製ってところがまた所有感をそそるじゃないですか!
やっぱフランス人はいざとなると弱弱しくってダメだな。うん。いざと言うときに頼りになるのはイギリス人だよっ!!大英帝国バンザイだ!!

鼻息も荒く登山用品店で興奮した19歳の僕は、こうして自分用としての二代目のコンロをRPI製に決定したのでした。

ハイ。ここまでが「前史」ですネ。

続きままた後日!
さて、すでに何度か書いておりますが、僕は高校生になると山岳部に所属します。
高校時代はキャンプなどの時はほとんど部の備品を使用するた、このキャンピングガスはあまり出番がありませんでした。

しかし僕は高校時代に使用していた備品のコンロのことをあまり思い出したくありません・・・

登山というのはオートバイや自転車に比べるとはるかに定型化された世界でして、用品に関しても「○○のためには△△でなければならない」というような、長年の間にその世界で形成されてきたたルールに従うことに人々はあまり疑問を感じません。まぁそれなりに危険性の伴うスポーツですので、その辺りが厳格になるのは分かります。

そして誰かが「高校山岳部で使用するコンロの燃料は灯油に限る」とか言い出したのでしょう。
僕が在籍中は大会などへの参加をしておりませんでしたのでその辺の基準はよく分からないのですが、大体(80年代の)高校山岳部というと灯油ストーブを使うのが定石だったのです。

恐らく安全性の問題だとは思うのですが、灯油燃料の一番のメリットは「ガソリンよりもかなり安全」というものでした。
当時ガスコンロは低温化での使用では全く信頼性がありませんでしたので、「ガソリンよりも安全で、ガスよりも高出力」という理由が灯油のコンロを選ばせた理由なのではないか?と推察されます。

しかし裏を返せば「ガソリほど高出力ではなく、ガスの利便性もない」というのが灯油コンロ」というもののポジションでした。
元々液体燃料は、燃焼のために燃料を気化させねばならず、そのためにはポンピングとプレヒートが必須なのですが、気化点が高い灯油は、ガソリンに比べるとはるかにその手間がかかります。

その上部の備品になっていたコンロときたら、長年の酷使と手入れの悪さからコンディションは最悪で、慣れていない一年生の頃に炊事訓練なんかしようものなら、まともに火が安定するまでたっぷり30分くらいの時間がかかってしまっていました。
今の高性能ガスコンロなら飯も炊き終わってオカズの一品も作り終えている時間です。

そんなわけで、大学に進学して個人用の装備としてコンロの購入を検討している時にも、灯油コンロはその選択肢には入りませんでした。

と言うか、僕の「コンロ史」の中でもこの「灯油コンロ時代」は無かったことになっています(笑)。
(ただしこの僕の灯油コンロに対する過小評価は、部の備品のコンディションが悪すぎたことに起因する・・ということを割と最近知ることとなります)
さすがに当時使用していたものの画像ありません。
しかしキャンピングガスと言えばこの青いカートリッジですね。
いかにもフランス製・・・というオシャレな感じがしたものです。
しかし当時のキャンガスのカートと言えば、内臓バルブなどがないため、一度コンロにねじ込んだが最後、中身を使い切るまで外せないという大変不便な仕様でした。
実はここからが本当の迷宮なのです。

未だに僕は「コンロ選び」と「ランタン選び」の迷宮から抜け出せません。
しかもコンロ選びに関して言うと、その迷宮の入り口に立ったのはおよそ30年前。中学三年生。15歳の時なのです。思えば「アウトドア用品」というものを自分の意思で購入したのは、アレが最初のことでした。

それ以来僕は暗くて寒いトンネルを歩き続けているのです。お母さん寒いよぉ・・・

15歳の僕がコンロを購入する目的は自転車でのキャンプツーリングでしたので、コンロ選びの指針は恐らく「サイクルスポーツ」誌だったと思うのですが、何しろ昔のことですので記憶が定かではありません。

ただし選んだアイテムのことはよく憶えています。
それはフランスのアウトドアコンロメーカーである「キャンピングガス」社製のガスコンロでした。

アウトドア用のコンロの燃料というのは今も昔もそれ程変わっておらず、当時から「ガソリン」「灯油」「ガス」の三種類でした。
バイクならば燃料を共用する目的で「ガソリン」という選択肢もあるのでしょうけど、自転車ならばわざわざ扱いが面倒くさい液体燃料を選ぶ理由はありません。

恐らく「サイクルスポーツ」誌の「キャンプツーリングをしよう!」とかそんな特集記事に「ガスが便利でよろしい」とか書いてあったのでしょう。
燃料の種類は迷わずガスを選択しました。

するともうおのずとメーカーは限られてきます。
その当時、キャンプ用のガスコンロをリリースしているメーカーは「キャンピングガス」社ただ一社だったのです。

まだイワタニもEPIも生まれる前の神代の時代の話なのです。

そして近所のスポーツ用品店の棚に、野球のグローブやサッカーボールに混じって、そのキャンピングガス社製コンロが陳列されているのを僕はかなり前から目をつけておりました。

お年玉を握り締め、僕はそのお店へと走りました。たしか7000〜8000円くらいだったんじゃないでしょうか?

今のガスコンロに比べると無骨なほどにデカイそれを家に持ち帰ると、僕は早速自転車用のアルミボトルをそのコンロにかけ、紅茶を沸かしました。
何となくサイクリストは紅茶を飲むのがお約束で、15歳の僕は、いちいちそういう定型化した行動をとりたがる小賢しいガキだったのです。

「ゴオッ」と音を立てる青い炎を見つめていると、まだ見ぬ土地を荷物を満載にしたランドナーで旅をしている夢想が無限に広がっていきました。
その妄想は必ず最後にはナゼか女性の裸体になっていくわけですが、男子中学生なんてそんなものなんですよ。
火を起して猿から人へ コンロ選びの迷宮 その1