結局その後20年に渡って愛用することとなるロッジオリジナルシュラフです。
どこかがOEM生産していたのでしょうけど、そのメーカーまでは不明。

余談ながら、僕は一時テントを張るのも面倒で、
画像のように適当に地面にマットとシュラフを
敷いて寝るスタイルを好んでいた時期がありました。

コンビニで弁当とビールとビッグコミックを買うと、適当にその辺でゴロリ。
これはこれで雨さえ降らなければ快適でした。
このロッジ製シュラフのデビューは12月末の大峰山(山上が岳)登山でした。
関西の2000メートル弱の低山ですが、前々日に雪が降り、頂上付近はスネくらいまでの積雪がありました。

その上頼みにしていた避難小屋が想像よりも状態が酷く、ドアも窓も付いていないために、板の間には薄っすらと降りこんだ雪が積もっています。

そんな中でも、新しいシュラフとシュラフカバーは僕に快適な睡眠をもたらしてくれました。

単独登山で、他に入山者もなく、ラジオも文庫本も持っていっていなかったので、僕は飯を食い終わると真っ暗な小屋の中で一人寝るしかないという寒々とした状況でしたが、そんなことよりも僕は「本物のシュラフ」の暖かさというものに対する感動の方が大きかったのです。

結局このシュラフはその後20年間使い続けました。

収納性を重視するあまり、必要以上に小さく造りすぎたと思われる収納袋が裂けてしまった以外は特に不具合も不満もなく使い続けました。

今現在も所有はしていますが、最近はこいつを持ち出すことはまず無くなりました。

これは誰しも経験すること(だと思う)ですが、キャンプ用品のセレクトの基準にはその時々に流行りというかテーマのようなものがあり、時には徹底して軽量・コンパクトさに拘る時期と、それよりも快適性や個々の道具の機能性に拘る時とが交互にループしながらやってきます。

アウトドアでの遊びが登山からオートバイツーリングに移行し、どちらかというと軽量・コンパクトさよりも「重厚長大」重視傾向が長く続いた僕に、ある時突然「装備徹底軽量化計画」が持ち上がります。

理由らしい理由はその年に北海道行きを計画していて、装備の一新を図りたいという気持ちがあったのは確かなのですが、まあそういうのは後付け的な理由で、単純に「そういうことがやってみたくなった」ということなんでしょう。

この辺はアウトドア物好きの方ならご理解いただけると思います(多分・・)。

そんなわけであの「ロッジ」での苦悩から20年、僕の新しいシュラフを選ぶ旅が始まるのですが、そのお話はまた次回に。
これが大阪ロッジオリジナル製である証
あの時の店員のお兄さんは元気だろうか?

オリジナルの収納袋が破れてしまったので
防水のスタッフバッグに入れて使っていました。
オリジナル収納袋ですともうちょっと小さくなるのですが
やはり大きさはそれなりですネ。
大学に入ると、アルバイトで自由に使えるお金がちょっとづつ出来はじめました。
そうは言っても一度に全てを買い換えられるほど収入があるわけではありません。

そこで僕は毎月「今月はコンロ」、「今月はコッヘル」というようにひとつづつ手持ちの装備を刷新していきました。

シュラフを買う時は、上記のような理由から特に慎重になりました。

僕はその頃尼崎で週に2〜3度アルバイトをしており、藤井寺の学生寮に帰るまでの道すがら梅田の第4ビルにある登山用品店「ロッジ」に通い詰め、顔馴染みとなった店員さんに相談しながら「次に買うべきシュラフ」を選定していきました。

今考えればあの店員さんも忍耐強くていい人だったと思います。

僕が悩んでいたクラスのシュラフというのは1万円台前半〜後半くらいの価格帯のもので、その程度の金額のものを買うために三日と明けずに店に顔を出し、あーでもないこーでもないと質問をぶつけ、雑談につき合わせ、大抵の日は「それじゃバイト代が出たら買いに来まーす」と言ってほとんどお金を使わずに帰ってしまうのに、イヤな顔一つせずにとても親切に色々とアドバイスをしてくれました。

今度大阪に行った時にでも「あなたが私の目標の店員でした」とか挨拶に行ってみようかしら?

さて、その時に僕が購入対象のシュラフの条件にしていたのは以下の3点でした。

○最低でも−5℃程度の温度に耐えられること
○化繊であること
○2万円以下であること

金額の面は単純に僕の懐具合なわけですから、いちいち語ることでもないでしょう。
問題は上の二点です。

使用条件が夏の3000メートル級の山と、春・秋2000メートル級の山の主にテント縦走ですから
「−5℃」設定というのは若干オーバースペック気味と言えなくはないのですが、元々が極度な寒がりな上に、最初のシュラフのトラウマから「もう寒いシュラフはコリゴリ」という思いが強かったのです。 

暑ければファスナーを開けるなり、敷布団にしてしまうなり対応策はあります。

二番目の「化繊」というのも理由がありました。
その頃シュラフに関わらず、アウトドア用の科学素材というの凄まじい発展を遂げつつある渦中だったのです。

70年代の後半にゴアテックスが登場し、ウエアのファブリクスとして防水・透湿素材というものが急激に普及し始めたのと同じく、ウエアやシュラフのための中綿素材も、中空繊維の「ダグロン」や、超極細繊維「シンサレート」などの登場で急速に進歩してきていました。

それまでのようにシュラフの素材として

羽毛>>>>I超えられない壁I>>>>>化繊

というような単純な図式は、場合によっては成り立たなくなりつつありました。

化繊の発達は、羽毛の致命的な弱点である「濡れるとやっかい」ということと「絶対的な価格が高い」という二点を克服した素材として主流の座を奪いつつありました。

特に「濡れ」への強さはかなり魅力的でした。
羽毛シュラフは一度濡れてしまうと、素人の手には負えないもの・・・という側面が強く、扱いも慎重にならざるを得ませんし、濡らさないためにはシュラフカバーの併用が必須です。

その点化繊のシュラフは、いざとなれば洗濯機に放り込んで洗えるというタフさです。

羽毛には適わないものの、昔に比べて軽さもコンパクトさも実用レベルにまで進歩してきています。

友人が出て間もないモンベルのバロウバッグを購入し、その出来にちょっと感動していたところも化繊へと傾いた大きな理由だったと思います。

また、これは羽毛には全く罪は無いのですが、例の「ニセモノ羽毛シュラフ」のせいで、「羽毛なんて言うほどたいしたことはない」みたいな偏向したイメージを持ってしまったのも一因ですね。

当時の僕にとってはもはや羽毛シュラフというのは「金持ちのオッサンが買うもの」くらいのイメージしかなく、始めから購入対象にはなっていませんでした。

さて、僕は最終的にその条件の中で購入対象を二つの機種に絞りました。

○モンベル バロウバッグ

○ロッジオリジナル

どちらも使用最低温度はー5℃です。

価格はモンベルの方が¥18,000くらいで、ロッジオリジナルの方は¥12,000でした。
シュラフとしてのスペック(使用温度域、収納時の大きさ等)はほぼ互角です。

ただし見るからにモンベルの方がモノが良さそうでした。
モンベルのモデルは、顔の部分のドローコード周辺にもタップリと中綿が詰め込まれ、カラーリングもオレンジ×ネイビーのツートンで所有感をも満足させるオシャレさです。
対してロッジの方は、ライトブルー単色の愛想の無いデザインで、「持つ喜び」のようなものはてんでありません(笑)。

僕は頭が割れるほど悩みましたが、学生の身には¥6,000の差はデカかったのです。
結局ロッジの方を選びました。その分、エントラント製のシュラフカバーも購入しました。


テント編でもこの画像使いましたが
初代のシュラフが写った唯一の画像です。
こんな古い画像なのに、シュラフの
ペナペナ具合がお分かりいただけるかと
思います・・・
恐らく平均的な日本人ならば、「テント」と言われれば大体の人がそれほど実際と違いの無いイメージを頭に思い浮かべることが出来るでしょうけど、「シュラフ」となると急にイメージできる人の割合が減ってしまうんじゃないでしょうか?

もしかしたらアウトドアに関心の無い人ですと、「シュラフ」という言葉の意味も知らない人も多いかもしれません。
知っている人でもシュラフというのが実はドイツ語だということを知っている人となるとさらに限られてくるでしょう。
(ちなみに英語ですとそのまんま「スリーピングバッグ」です)

日本の登山技術というのはそのほとんどがヨーロッパからもたらされており、そのために登山用具の呼び名はそのほとんどがドイツ語のまま定着していきました。(なんでフランス語でなくドイツ語なのかは知りませんが)。

だから関心の無い人ですと、その語感から実際をイメージするのが難しいものが多くなります。

例えば「コッヘル」。例えば「ザイル」。

ですから、逆にそれらの用語の雰囲気がもたらす「何か専門的っぽい」雰囲気が僕の憧憬をより強いものにしました。

シュラフを手に入れる行為・・というのはただ単に道具としての寝具を手に入れることではなく、自分がより本格的なアウトドアの世界の入り口に立った気にさせるものがあり、それは無条件に僕を興奮させました。

しかし僕が初めて手にしたソレは、その憧れとは程遠い微妙なシロモノなのでありました(泣)。

15歳の時に初めて買ってもらったシュラフは、初めてのテントと同じくアメ横の中田商店で購入したものでしたが、それがそもそもの間違いだと気が付くには僕はあまりに子供過ぎました。

さらに悲惨だったことは、そのシュラフは一応「羽毛シュラフ」であったことなのです。
「羽毛」のような高級素材の何が問題なのか?と思われることでしょうけど、その自称「羽毛シュラフ」は1979年当時としても7千円と格安で、封入されていた「羽毛」もそれ相応の質と量だったことなのです。

しかし、既に「いちいち形や知識から入る小賢しいタイプ」の萌芽が見られ始めていた15歳の僕は、「化繊よりも羽毛の方がシュラフとしては格上」ということだけは知識として知っており、そのために「自分が買ったシュラフはとても『いい物』なんだ」という呪縛にその後数年捉われてしまったのです。

問題の「羽毛シュラフ」君は、その価格に相応しく中身はほとんどがフェザーで、中に入るとガサガサと喧しい音を奏でました。
その上縫製も悪く、買ってすぐに家で広げてみて、その後に畳もうとした瞬間にホツれた縫製部分から(ほとんどがフェザーの)その「羽毛」がブシューっと飛び出してきたのです(半泣きで母親に縫ってもらいましたww)

しかし他に比較するべきシュラフの基準なんて僕は持っていません。
僕は「シュラフってのはそんなものなんだ」と思い込みました。何てったって僕が買ったのは「羽毛シュラフ」なのです!「粗悪品」や「不良品」であるわけがないのです。

僕は早速ウキウキとそれをブリジストンのランドナーの後に括りつけ、千葉県半周の旅へと出ました。

今まだ春浅いとは言え、3月の房総半島の山中でそのシュラフに包まっていて、歯の根も合わないほど寒い思いをしても「羽毛シュラフでこんなに寒いのなら、化繊シュラフならもっと寒いに違いない」としか思いませんでした。若さ故の思い込みというのは可哀想なものです。

今僕の手元に無意味にゴロゴロしているシュラフの一つを、30年前の僕に一つ分けてあげたい衝動が抑えきれません。

結局僕は高校生活の3年間はこのシュラフを使い続けました。
基本的に冬山には行かない高校山岳部でしたので、温暖な季節中心に使っていたにも関わらず、僕はついぞそのシュラフの中で「暖かい」と感じたことはただの一度もありませんでした。

3月初旬の雲取山山頂の避難小屋の中では、シャレにならない程の寒気の中で一晩中震え続けました。(他の山岳部員によるとイビキをかいていたそうですが、多分気のせいです)。

田舎のヘッポコ山岳部とは言え、一応用品は中田商店ではなくちゃんとした登山用品店で購入していましたので、何度かそういうお店へ足を運ぶうちにさすがの僕も「もしかしたら僕のシュラフというのは相当ダメな部類に入るモノなのかもしれない」と気が付き始めます。
お店の一角にズラーッとぶら下がっている色とりどりのシュラフ達は、どれもこれもフッカフカのフワフワでいかにも暖かく気持ちよさそうです。

しかし高校生にとって万単位の買い物というのはそうおいそれと出来るものではありませんし、親に頼もうにも「あんた羽毛のええヤツ持っとるがね!」と言われてお終いです(実家は千葉ですのでこんな言葉遣いではありませんが)。

僕が「本物のシュラフ」を手に入れるのは、大学入学後まで待たなくてはなりませんでした。

ハイここまでが「前史」です。読破ご苦労様です。まぁお茶でも一杯どうぞ。
快適なキャンプライフは快適な睡眠から シュラフ選びの迷宮 その1